ダブルの深刻な人不足で高齢者物件が不良債権化 [取材の雑ネタ]
ほんとうの仕事は福祉ジャーナリストです。
だから病院や介護施設を取材しています。そのとき、「人が集まらなくて……」という嘆きを聞くことが増えてきました。
ヘルスケア事業は人材こそが商品そのものです。ショップ経営では品揃えを切らさない=売り時をのがさないことが鉄則でしょう。欠品は、なにがあっても回避すべき最重要の課題です。
同じように、ヘルスケア事業では人材を揃えることこそが最重要なこと。それを並べる棚は二の次で、とにかく人材という商品を切らしてはいけません。医師がいなければ閉院するしかないし、介護職員が揃わなければどんなに志が高かろうとも利用者を護れません。
その人材がいないのです。
このところ所得にその原因を求める論調が多いけれど、お金で人は動きません。もう少し正確に言うと、お金では人材は定着しないのです。収入だけがモチベーションという人は、困難な環境ですぐに心が折れてしまいます。だから高い離職率の原因はもっと別のところにあるでしょう。
それはねという話は別の機会にするとして、予算もあって施設は準備できても肝心の働く人がどこにもいないのです。
とくに介護職の人手不足はかなり深刻。人材紹介会社経由でようやく採用できるかどうか。けれでも介護福祉士の養成校は定員を大幅に下回る学生数しか在籍していません。ようするに新規参入の人材が細いなか、紹介会社経由で人材の奪い合いをしているような状況です。
これは金融のマネーゲームと同じで、実態のない理由で採用コストを引き上げているだけにすぎません。
高い手数料を払って採用した人材は、また別の会社へ転職します。そうするとさらに高い手数料を払って人材を採用する。人材はヘルスケア業界のなかをグルグルと回っているだけで、その価値は一定なのに採用コストだけが高騰していきます。まるでサブプライムローンや安倍バブルのようですね。
さらにここに来て、もう一つの人不足も目立ってきました。
利用者がいないのです。
高齢者の人口は増え続けているけれど、高齢者住宅や低価格の有料老人ホームが多く建設され、受け皿が供給過剰になっています。だから少しでも条件の悪い施設だと、たとえ特養ホームでも空床がではじめています。
2000年の介護保険で政府は高齢者向けは民間にサービス供給を委ねました。だから助成金があるとはいえ、民間の投融資で施設開発が進んでいます。空室が増えるとこの負債はどうなるのでしょうか。相続税対策で高齢者住宅を建てちゃった素人オーナーさんもいますね。これから、そうした施設が不良債権化していく可能性も高まっています。これはアパートの過剰供給問題と共通した社会リスクになっているのではないかと心配しています。
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